(文法)❌修飾 ⭕️限定
90%完成。100%を待つといつかわからないので、90%ですが載せます。
目次
修飾は❌、限定は⭕️
広辞苑の「修飾」の定義
「修飾」を広辞苑で引くと:
「 (文法用語)体言または用言に、その表す意味を限定するために他の語をつけ加えること。」
……とあります。
例えば「いちごのケーキ」。
「ケーキ」と言ってもいろいろあるが、いちごのケーキだよ、と限定すること、これを日本語では「修飾」だと言っているということです。
このような「限定」を日本語の世界では「修飾」と呼んでいる、というのが広辞苑の言い分です。(「修飾」の定義が「限定」なのですから)
私も同感です。
「修飾」と「限定」のイメージがあまりに違いすぎる…
しかし、「修飾」(=飾る、という印象を受けます)と「限定」(=いろいろとある中で、これだ!と絞り込むこと)ではずいぶんとイメージが異なります。
全く接点がないように思えます。
ですから池田英語塾では「修飾」は❌、「限定」が⭕️だ、としています。
「修飾」の一般的なイメージ
おそらく「修飾」の一般的なイメージはこんな感じではないでしょうか:
元・早稲田アカデミー武蔵境校の小六の国語(受験生)担当のある講師の授業内容です。
「修飾」って、スポンジケーキがあるとするね(↓)。
そこに、生クリームを塗ったり(↓)、
イチゴをのっけたりして「飾るよね」(↓)
はい、この生クリームを塗ったり、イチゴをのっけたりするのが「修飾」だよ。
日本語の形容詞は名詞を「飾る」働きをするんだ。
「いちごの生クリームケーキ」なら「いちごの」「生クリーム」が「ケーキ」を飾っているんだ、修飾しているんだ。
どうかな?わかったかな?
……「修飾」の説明って大なり小なりこんなところではないでしょうか。
英語では「修飾」は誤解を生むだけ。「限定」一択!
……日本語ならいいのかも知れません。
しかし、英語ではダメです。(あ、ちなみにこの早稲田アカデミーの講師の名前は「池田浩己」と言います。早稲アカって、大学受験では予備校に相当劣ると思いますが、中学受験、高校受験では名門らしいですね。参加できて光栄です。勉強になりました)
英語の形容詞は原則として「限定」の働きをします。
「いろいろある中でこれだ!」です。
「いちごのケーキ」(左)なら、メロンケーキ(真ん中)、シャインマスカットのケーキ(右)とかいろいろなケーキがある中でこれだ!他ではない!というのが限定です。(絵が下手なのはご勘弁ください。すみません)
「ケーキ」を「いちごのケーキだよ」と飾るのと、いろいろなケーキがある中で、メロンとかシャインマスカットのではなくて「いちごの」「ケーキ」なのだと限定するのは全くイメージが違うと思います。
広辞苑は修飾と限定の2つを同じものと扱っていますが、池田英語塾ではイメージがここまで異なる以上、明確に分けるべきだと考えました。
ですから池田英語塾では「修飾」という言葉は禁句、全て「限定」で置き換えています。
*beautiful Tokyo Tower?
私の友人に帰国子女で現役で東大理科三類合格という恐ろしい人物がいます。
この人には私が英語を間違えたらすぐに修正してくれと頼んであります。
この人に「beautiful Tokyo Towerってさ…」(間違っているよね、と言いかけた瞬間に)「何それ?言わない。気持ちわる!」と返されてしまいました。
*beautiful Tokyo Towerって、英語の形容詞は限定が原則ですから、「いろいろな東京タワーがある中で、綺麗な東京タワー」と言っていうので間違いです。
そんな東京タワーはありませんから。(東京タワー、一つしかないし。いろいろないし。)
中一の池田少年、「修飾」がわからずに悩む
あと中一の池田少年の話。
新潟県長岡市のある市立中学校です。
学校の先生がHe runs fast.「彼は速く走る」→「彼は足が速い」の説明で以下のようにおっしゃった。
fastは、runs「走る」という動詞を修飾している、だからfastは副詞だと説明。
でも中一の池田少年は、fast「速い」って、runs「走る」も確かに飾っているが、He「彼」も飾ってもいるじゃないか。
それにどちらかと言えば、「彼は速く走る」の中なら、runsよりHeの方を飾っているようにも思える。(「彼」が足が速いのだから)
Heって代名詞。
代名詞は名詞だから、それを飾るなら形容詞じゃないの?
などと思いました。
結構、説得力ありませんか?(昔からわかるまで納得できませんでした)
「修飾」という言葉では中一の池田少年を説得は難しいと思います。
では「限定」ではどうか。
runs「走る」と言ってもいろいろな「走る」がある。
速く走る、遅く走る、電車に間に合うように走る、トレーニングで後ろ向きに走る、横向きで走る……
こういういろいろな「走る」の中で、「速く」走るのだと「走る」を限定している。
動詞を限定しているのは「副詞」なのでfastは副詞だとわかります。
一方、He「彼」ですが…人称代名詞(I,my,me,you,your,you,he,his,him,she,her,her…)というやつは、実は一人しかいません。
「大谷翔平、大活躍だね。彼は…」と言ったら、「彼」は「大谷翔平」であって、一人しかいません。
一人しかいないのですから「いろいろいるが、どれかというと」という限定はできないことになります。
ですからfastは「副詞」であって、名詞を限定する「形容詞」ではありません。
「限定」なら中一の池田少年も納得してくれそうです。
アメリカの英文法書の中での「修飾」「限定」の扱い
日本の参考書にはこれを証明することが書いてないので(全ての本が「修飾」を当然の前提で記載)、アメリカの分厚い英文法書を証拠として載せます。
写真の5行目から8行目までを訳すと:
Nonrestrictive premodifiers are limited to adiectives with emotive colouring, such as :
old Mrs Fletcher dear little Eric poor Charles beautiful Spain
historic York sunny July
非限定的な前置修飾語は、以下のような感情的な色付けの意味を持つ形容詞に限られます: フレッチャーおばあちゃん、 可愛いエリックちゃん、 可哀想なチャールズ、麗しのスペイン、歴史溢れるヨーク、太陽溢れる7月
これらの中で使われている形容詞は全て「感情的な色付けの意味を持つ形容詞」です。(以下「感情の形容詞」とします)
dear Johnなんて言葉は見たことはあるのでは?
手紙でよく使われる「親愛なるジョンへ」です。
このような「感情的な形容詞」に限って、限定ではなく名詞を飾る働きをします。
いろいろなジョンがいるが、その中で親愛なるジョン、と限定して言っているのではなく「ジョン」、君のことを「親愛」だと思っているんだよ、のように「ジョン」を感情的に飾っているのです。
先ほどbeautiful Tokyo Towerは不可と言いましたが、beautiful Spainがあります。
こういうbeautifulは「麗(うるわ)しの」と訳せば感情の形容詞になるので使えます。
感情の形容詞は、限定ではなく、名詞を飾るだけなので固有名詞につくことができます。
「麗しの東京タワー」とは普通言いません。
ですから不可です(タワーが好きな同好の人々の集まりで、「俺、エッフェル塔が好きなんだよねー」「私はスカイツリー!」「いや、なんて言ったって東京タワーだよ。あの曲線、最高だよ。本当に見ているだけでゾクゾクしてくる。嗚呼、麗しの東京タワー、すぐにでも見に行きたいよ」……なんて文脈なら使用される可能性ありです。)
さらに、「非限定的な形容詞は、感情の形容詞に限られる」とありましたよね?
ということは、感情の形容詞以外の形容詞は全て「限定」なのです。
はい、このように形容詞は「限定」の働きをしています。
修飾ではありません!!!
The Cambridge Grammar of the English Language でも同様の記述です
時間がある時に追加で書き加えます。